はじめに
NMRパイプテクター®は配管内の赤錆防止・配管延命装置として多くの建物に導入されていますが、新たに水道事業でも注目を集めるようになりました。
日本水道協会の水道研究発表会で、横浜市水道局による実証実験の結果が報告されたためです。
水道分野におけるNMRパイプテクター®の可能性について、日本水道新聞に取り上げられましたので、今回はその記事の内容をご紹介いたします。
NMRパイプテクター®-NMRPT-の残留塩素減少防止効果
NMRパイプテクター®は、配水管の赤錆を防止する装置として、マンションや病院、歴史的な建築物など4,200棟以上に導入されています(2020年3月時点)。
日本のみならず世界からも厚い信頼が寄せられており、イギリスのバッキンガム宮殿にも設置されています。
これまでNMRパイプテクター®は建物内の給水管の維持メンテナンスのために設置されることが主でした。
一方で、2013年に開かれた日本水道協会の水道研究発表会では、NMRパイプテクター®の使用によって水道水の塩素濃度低下を抑制できるとする実証実験の結果が、横浜市水道局より発表されました。
その内容は、鶴見配水池付属公舎内の給水管でNMRパイプテクター®の設置前と設置後での残留塩素濃度の比較を行ったもので、設置前は主管から10M離れた場所のテスト配管内で塩素濃度0.5PPM、60M離れた地点で0.3PPM、135M離れた地点で0.2PPMと距離が長くなる程、配管内の赤錆の為に残留塩素濃度が減少していました。
NMRパイプテクター®を設置して試験開始から4ヵ月後の結果では、設置場所の主管から10M離れた場所の塩素濃度は0.6PPMに対し、60M離れた地点でも0.6PPMと塩素濃度の減少はほとんど無くなりました。また、135離れた地点の塩素濃度も0.55PPMと上昇し、残留塩素減少幅もわずか0.05PPMとなっていました。
この試験結果からNMRパイプテクター®の設置により、塩素濃度低下の抑制効果についての立証がされました。そのため、水道事業にもNMRパイプテクター®の活躍の場が広がるのではないかと期待されています。
水道水の衛生保持に必要不可欠な残留塩素
私たちがいつも使用している水道水は、塩素によって消毒されています。
塩素は、水源で採れた水に含まれる病原菌の殺菌や、ウィルスの不活化の作用があり、さらに残留塩素として殺菌効果を各家庭の蛇口まで維持しています。水道水をそのまま飲むことができるのは、この残留塩素のおかげです。
水道局から各家庭に届くまで水道水の中に十分な量の塩素が残留していることが、水道の衛生を保つ上で必要不可欠なのです。
老朽化する水道管路と財源が厳しい地方水道
1970年代に全国の水道が整備され約半世紀が経ち、現在では水道配管の老朽化が問題となっています。
水道配管の老朽化によって道路冠水などのトラブルが報告されています。
また水道配管が赤錆に浸食されることで、雑菌が繁殖しやすい状態となり、衛生的な水を各家庭に届けるために、より多くの塩素を使用する必要が出てきている地域もあります。
このような問題を解決するため、また耐震などの理由から、全国の水道事業体では水道配管の敷設替えを急いでいます。
敷設替えには多くの財源が必要となりますが、特に地方では給水人口が少ないあるいは人口が減っている地域が多く、十分な収入を確保できないために、敷設替えへの道筋が見えていない事業体も増加しています。
残留塩素濃度の維持のために陥る負のスパイラル
水道事業体として、水道水の衛生保持はとても重要な使命ですが、残留塩素濃度を維持するために、捨水をしている水道事業体もあります。
水道使用量が少ない配水地域では、水が停滞しやすくなります。
水が停滞すると、消毒のために塩素を多く消費します。
残留塩素が検出されない場所では、衛生保持のために残留塩素が検出されるまで水を捨てることがあり、これを捨水と呼んでいます。
東北地方のある事業体では、捨水量が年間およそ5億円に相当するほどです。
水道水を衛生的に保つための捨水によって水道事業の財政が厳しくなり、水道配管の敷設替えがさらに遠のき、配管内の衛生状態が悪化するという負のスパイラルに陥りつつあるのです。
今回は、水道水における残留塩素の重要性と地方水道事業が直面している財源確保の問題ついてご紹介しました。次回は、NMRパイプテクター®の水道分野における意義についてお話します。